『完本 哲学への回帰 人類の新しい文明観を求めて』

アメリカ文明は正しいのか」「環境問題・進歩から循環の思想へ」「“働く意義”を利他の精神から考える」「日本人の道徳の復興」

稲盛和夫氏と梅原猛氏の過去の対論3冊を、1冊にまとめなおしたもの。
二人の碩学による、経営の視点と宗教哲学的な視点を織り交ぜた日本人への提案をじっくり読む。

個人としてはまずこの言葉を刻む。

福沢諭吉の言葉(『哲学への回帰』p33)
思想ノ深遠ナルハ哲学者ノ如クニシテ、心術ノ高尚正直ナルハ元禄武士ノ如クニシテ、コレニ加フルニ、小俗吏(り)ノ才ヲ以テシ、更ニコレニ加フルニ、土百姓ノ身体ヲ以テシテ、初メテ実業社会ノ大人タルベシ

→まず哲学者がもつような深遠なる思想をもたなければいけない。そして、元禄武士がもっていたような美しく気高い心がなければいけない。三番目にくるのが「小俗吏ノ才」です。江戸時代の木端役人が袖の下ぐらいもらったような、気の利いた悪賢い才覚を福沢は「小俗吏」と言っているのですが、そういう「小俗吏ノ才」をもっていなければならない。最後に、農民のような「頑健さと粘りの意思」がなければいけない。