黒田恭一さんの『クラシックのおすすめ いい音楽との出会い』

クラシックのおすすめ―いい音楽との出会い

クラシックのおすすめ―いい音楽との出会い

  • 作者:黒田 恭一
  • 発売日: 1999/07/01
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

ドラクエのサントラのライナーノーツに素敵な文章を書かれていた黒田恭一さんの本。

クラシック音楽もいろいろ聞いてみてはいるものの、知識なのか生来の感受性の問題なのか、なかなかハマるほど惚れ込む作品が少なく、なにかの手がかりが欲しくて手にしてみた。

最初の章に綴られた文から、向き合い方なのかもとハッとさせられた。

 ぼくはクラシック音楽をきくのが大好きである。
 さいわいにも、ぼくは、その大好きなクラシック音楽をきくことによってたくさんのことを教えられてきた。クラシック音楽から学んだことはさまざまあるが、それらのうちで、ぼくにとってもっとも大切なことは、謙虚であれ! ということである。いろいろな音楽をきいているうちに、謙虚にならないと古典とはつきあえない、とうことがわかってきた。
 同じことは古典的な文学作品についてもいえるであろうし、古典的な絵画についてもいえるにちがいない。文学にしても絵画にしても、もちろん音楽にしても、古典といわれるほどの作品ともなれば、くめどもつきない魅力をそなえている。

クラシック音楽前人未到の山などありえない、とわかったことで、ぼくはクラシック音楽との無理のない、自然体のつきあいができるようになったと思う。そして、同時に、そのとき、ああ、この音楽にはあの人も遠い日に耳をすましたにちがいないと、尊敬できる先達の顔など思い出しつつきけるしあわせがクラシック音楽をきいて味わえることも、学んだ。美術館で名画といわれる絵画の前に立ったときにも、この思いは、おのずと胸をよぎる。名画の前で、若輩者ながら、しばし拝見させていただきます、と思えるのはなんという幸せであろう。

せっかくクラシック音楽をききながら謙虚さを学ばなかった人は、おそらく、クラシック音楽のもっとも大切な部分を感じとりそこなっているのである。もったいないことである。

 「謙虚さ」というキーワードを、曲を聴く前に胸にとどめておこうと思った。