バッハ平均律講座(角倉一朗氏×イリーナ・メジューエワさん)

今日は角倉一朗氏の解説とイリーナ・メジューエワさんの演奏によるバッハ平均律の講座を聞きに新宿へ。

特に両者での事前すり合わせ等はしていなかったようで、はじめに角倉さんがメジューエワさんにとって平均律とはどんな存在かを聞き、それに答える形で講義がスタート。

メジューエワさんは日本在住が長く、日本語もとてもお上手。平均律については、最も奥の深い作品で、アルファ~オメガであり、過去未来現在すべてを含むということをおっしゃっていた。小さい頃はやらずにいたので、もっと早く取り組めばよかったなんてセリフも(笑)。

聴く難しさもあれば、楽譜を見ることでわかることもある、練習曲として鍵盤楽器で弾くことも全て含まれているなど、ピアノ学習者は避けられない作品であることを再認識させられた。

その後資料に沿って角倉氏による成り立ちや特徴についての説明。自筆譜のスライドでは、バッハの力強い筆跡と妻アンナ・マグダレーナによる筆写譜(第2巻の約1/3)の丁寧で細かい筆跡との比較なども見せてくれた。19世紀以降に普及した楽譜は誤植も多く、最も広まったツェルニー校訂版は第1巻ハ長調前奏曲が1小節多い話も。

そもそもバッハの自筆譜にはテンポ・表情の指示は非常に少なく、強弱の指示は皆無。解釈は学習者・演奏者に大きく委ねられており、さらにそれを現代のピアノで弾くというのは、面白くもありとても難しいところでもあるとのこと。

メジューエワさんの演奏は、続けて集中できるようにと、解説は間に挟まない構成。各声部の弾き分けが素晴らしいのはもちろん、ダイナミックに弾く解釈も。フォルテシモでキンキン鳴ってしまう場面があり、ピアノの状態があまり良くなかったっぽいのが少し残念だけれど、学生時代からのファンであるピアニストの演奏を、呼吸やペダリングなどが見れるほどの至近距離で聞けてよかった。

リサイタルよりも短い時間で、このくらいの長さのほうが集中力も持つので、大ホールで聞くより全然よかった。おじちゃんおばちゃんたちの雑音を差し引いても、お金を払う価値は十分にあった。

第1巻より(4曲):
ハ長調 BWV846
ト短調 BWV861
変イ長調 BWV862
嬰ト短調 BWV863

第2巻より(4曲)
ヘ長調 BWV880
ヘ短調 BWV881
嬰ヘ短調 BWV883
ロ長調 BWV892

メジューエワさんの本とCD

 昨年9月に出版された、ピアノの名曲についての語り下ろしの本。一章がバッハで、平均律も一番最初に登場。

平均律クラヴィーア曲集第1巻 メジューエワ(2CD)

平均律クラヴィーア曲集第1巻 メジューエワ(2CD)

平均律クラヴィーア曲集 第2巻 イリーナ・メジューエワ(ピアノ)(2CD)

平均律クラヴィーア曲集 第2巻 イリーナ・メジューエワ(ピアノ)(2CD)

 バッハは演奏会で一度きりでなく、録音でひたすらリピートして聴く。